安威川ダムを考える 2007年11月版

@安威川ダム計画の場合は、2005年8月に大阪府は利水計画を日量1万立方bに縮小しましたが、一貫してダムに固執しています。そして2009年に本体工事に着工するということで、用地の買収、付け替え道路の建設と立ち退き者の代替地の造成工事を継続しています。この間、国土交通省近畿整備局は淀川水系の河川整備計画の策定の作業を進めてきましたが、「脱ダム」の方針を打ち出した流域委員会を改組し、ダム事業を再び推進しようとしています。そして大阪府も2003年6月から安威川を含む神崎川水系の河川整備計画策定の作業を進めてきましたが、当初計画通りの内容で河川整備計画を決定しました。しかし現在の大阪府の財政状況ではダムを建設する状況には全くありません。ひきつづいて安威川ダム計画を一旦凍結をして、ダムに頼らない利水と治水対策を検討させるようがんばりましょう。

A2003年6月の国会で、特定都市河川浸水被害対策法が全会一致で成立しました。この法律は東海水害など最近の都市部の浸水被害やヒートアイランド化等による集中豪雨の頻発などに対応するために、従来の河川法、水防法、下水道法、都市計画法の枠を超えて機能させるもので、河川管理者・下水道管理者及び地方公共団体が一体となった新たなスキームにより浸水被害対策を確立しようとするものです。すでに国は大阪府内では寝屋川、猪名川、天竺川、高川などを対象河川の候補として、リストアップしています。過去の浸水被害の実態や原因から見て、安威川流域の治水対策のためには、総合的な対策が必要です。対象の河川として、検討させるよう求めていきましょう。

B 安威川ダムを一旦凍結をして、「ダムに頼らない、治水の方策を検討せよ」と求める第一の理由は、上流のダム建設による治水ではなく、流域全体の総合治水こそ、下流の都市型水害防止にもっとも有効だからです。 ところで大阪府のダム計画書では、「昭和42年7月豪雨により、安威川は宮鳥橋上流左岸で、破堤するなど浸水家屋25,240戸など大きな被害を生じた」としていますが、これは被害の原因を正確に表現したものではありません。この図は、昭和42年の北摂大豪雨時に浸水が発生した地域とその原因を表したものですが、赤く塗った部分はすべて、排水不良による浸水即ち内水によるもので、安威川は××印の地点で流木により決壊し、横を流れる番田川の方へ崩れ落ちましたが、決壊による直接の浸水は全くありませんでした。また緑に塗った部分も支流の茨木川、山田川などの溢水によるものです。

C2000年9月に起こった東海豪雨では、床上浸水の被害を受けた12,000世帯の実に、75%が身近な河川の溢水と下水道からの逆流によるいわゆる内水による被害でした。また堤防決壊など河川の氾濫もその原因が下水道ポンプによる排水によるものであることが明らかとなりました。こうした結果からも、都市型水害というものは、これまでの河川の上流にダムを建設したり、堤防を高くしても解決しないことが証明されました。

Dこれは安威川流域の治水を考える上で、もっとも大事な、流域の状況を表したものです。安威川流域の全体面積は約163平方キロメートルですが、自然に安威川に雨水を排水できる地域は上流の120平方キロメートルで、下流は天井川で43平方キロメートルは自然には雨水を、安威川に排水できず、下水道を通じて行っている地域です。したがってこの地域に、時間雨量50ミリ程度以上の雨が降ると、先ほどの東海地域と同様の状況になることが予想されます。
ですから、安威川流域の治水を考える上では、河川の氾濫と内水による浸水との両面から考える必要があります。

Eこの立場から、具体的に5つの方策を提案しています。
第1に、河川整備の目標は、大阪府のように、100年に一度の大雨による流量を、過大に見積もって、たてるのではなく、適正なものとすること。
第2に、河川整備の中身として、本川の天井川改善をはじめ、堤防の強化、支川の茨木川や山田川などの河川改修を中心にをすすめること。
第3に、上流部での開発の規制を強化するとともに、森林整備や土砂流出防止のための沈砂池の設置などを進めること。
第4に、下流部の河川への負担軽減のため、ポンプによる本川への雨水排水システムを見直すとともに、内水対策のために雨水浸透・貯留施設の分散設置などをすすめること。
第5に、被害想定調査の公表など防災システムの確立をすすめること
以上の内容を含む都市型総合的水害防御計画を策定するために、住民や専門家も参加する検討機関の設置を求めています。

F ここで安威川とダム計画について、少し説明をさせていただきます。
安威川はその源を京都府亀岡市に発し、大阪府北部の高槻市・茨木市・摂津市、吹田市・大阪市を流下し、神崎川に合流する、流域面積163平方q、延長32qの大阪府管理の一級河川です。
ダムは1960年代後半に洪水防御と大阪府営水道の水資源確保のための、多目的ダムとして計画され、今日に至っています。

G 安威川ダムの完成予想図です。ダム湖の面積は甲子園球場の25倍、約百fで、茨木市生保(しょうぼ)地区など70戸の住民が立ち退きを強制され、また広大な農地も水没します。
型式はロックフィルダム、ダムの堤の高さは82・5b、堤の頂点の長さは368・5b 貯水量は2290万立方b、規模としては中の下の大きさです。

H 安威川ダムの総事業費は国と大阪府を中心に茨木市をはじめ流域の市が負担しますが、関連の工事を含めると1700億円程度といわれています。ただし本体工事の場合は約1400億円の80%近くが、起債による財源で、その返済は地方交付税で措置するといわれていますが、あてには出来ません。この点について「国からの手厚い金銭的補助が保証されているからとの安易な理由で、ダム建設を選択すべきではない」 といわれています。結局こうした制度が府県に、安易にダムそれも多目的ダムを選択する理由となっています。こうした制度も見直す必要があります。
ただし利水負担分については補助および起債の多くは水道料金に転嫁されることとなります。

Iみなさんは安威川を直接ごらんになったことはおありでしょうか。
ご存じのない方に、安威川の下流部、中流部、そして上流部についてご紹介したいと思います。

J 下流部は残念ながら、幹線道路や新幹線に取り囲まれ、下水道処理場や事業所などから排出される汚水で相当汚染されています。しかも上流からの土砂が河床に堆積し、極端な天井川となっています。

K 中流は一変して、渡り鳥のすみかともなっており、また釣りマニアの絶好の釣り場となっています。また河川敷は散策路として整備されており、市民の憩いの場となっています。

L 上流はかっては飯盒(はんごう)炊さんや水遊びのメッカとして、人気スポットになっており、とくに龍仙峡は多くの市民から親しまれてきました。今は上流の採石場などからでる濁水で、魅力は半減しています。

M ここがダム建設で集落全体が水没する生保(しょうぼ)地域です。

N このあたりが支流の下音羽川です。オオタカが生息するほどの自然が残されています。ここもダムの堤を建設するコア材を運搬するための道路として、ほとんど破壊されてしまいます。

O 安威川ダムを凍結して、「ダムに頼らない、利水と治水の方策を検討せよ」と求める第二の理由は、大規模な環境破壊になるからです。「脱ダム宣言」では、「よしんば、河川改修費用がダム建設より多額になろうとも、百年、二百年先のわれわれの子孫に残す資産としての河川・湖沼の価値を重視したい」と述べています。ご存じのように、安威川ダムの建設予定地は約2千種類の生物が生息する自然の宝庫です。特に貴重な種類としては、鳥類ではオオタカ、両生類ではオオサンショウウオ、モリアオガエル、ほ乳類では二ホンリス、昆虫類ではゲンジボタル、オオムラサキ、水生動物ではアジメドジョウ、植物ではフジバカマなどです。力を合わせて、大阪の貴重な里山の自然を守りましょう。

P とくに重要なのは、「日本の絶滅のおそれのある野生生物」=レッドデータブックで危急種とされている、オオタカの営巣が確認されたことです。安威川ダムの建設で、こうした貴重種が失われることを認めるわけにはいきません。

Q−1
次に安威川ダムを凍結して、「ダムに頼らない、利水の方策を検討せよ」と求める理由は、新たなダム建設による大阪府営水道の水資源確保は、水道料金の大幅引き上げと市町村の自己水源放棄・縮小につながり、さらに必要な水資源確保は、主に水利権の見直しで十分対応できるからです。
2004年度では近畿の水供給の中心的な役割を担う、淀川水系では上水道用水、工業用水などで日量948万立方メートルが水利権として、確保されています。しかし実際の使用量は、615万立方メートル程度で、残りの水が未使用となっています。これは10年前と比べると、未使用の量は拡大しています。今、国交省近畿地方整備局は2006年8月を目標に、淀川水系水資源開発計画(フルプラン)の見直しの作業を進めています。近畿の新たな水資源確保は未使用の多い工業用水を中心とした水利権の見直しで十分対応できるのではないでしょうか。

Q−2
水利権とは、上水や工業用水、農業用水、発電など一定の目的のために、河川の水を使用できる権利です。水道事業を営む自治体や私企業、水利組合などが持っています。歴史的に古い農業用水は慣習で認められた水利権ですが、普通は河川管理者の国交省の許可によって、権利が生ずるとされています。93年時でも、許可と使用実態には、相当な開きがあり、その後工業用水などを中心に一定の見直しが行われましたが、04年時の許可と使用実態の開きが一層拡大しています。

R 次に大阪府営水道の整備計画はというと、今から26年前の1979年に10年後に、一日最大給水量が265万立方メートルになるとして決められました。ところが、実際の使用量はほとんど増えず、2001年には10年後の一日最大給水量を253万立方メートルとして、修正されました。さらに今回、10年後の給水量を216万立方メートルとし、それに複数水源という理屈をつけて、15万立方メートルを上積みして231万立方メートルに下方修正しました。すでに大阪府営水道は現在223万立方メートルの施設を整備しています。今、大阪府の水需要の将来を考えるとき、今の223万立方メートル程度で十分です。したがって節水と水利権の見直しで十分対応でき、複数水源としての機能も果たせない 安威川ダム建設は全くの不要です。

S 見直しのし計画では、大阪府営水道は、整備済みの223万立方メートルにプラスして、府工業用水転用で7万立方メートル、和歌山県紀ノ川水系から1万立方メートルそして安威川から1万立方メートルと一日最大給水量231万立方メートルを確保しようとしています。しかし必要でない水資源開発が行われた場合は、受水市町村にその割り当てがますます強制されるので、地下水などの自己水源が縮小・放棄されるなどの新たな問題が起こります。いま大事なことは、渇水に強い水資源確保対策として、水浪費型産業や社会構造からの脱却をすすめるとともに、水利権の見直し、地下水など自己水源の復活や開発に取り組むことです。

(21) 大阪府は、「異常渇水時にも、豊かな水環境を保全し、複数水源として、万一に備えるのが、安威川ダムの大切な役割です」としていますが、こうした説明がいかに根拠のないものであるか、全国の多くのダムが渇水時には空っぽで無残な姿をさらしていることで、証明済みです。なぜこのようなことになるのかと言えば、もともとダムによる水資源開発は経済性を考慮して、10年に1回程度の頻度で起こる渇水を想定して、利水容量を定めているからです。それどころかダムによる大阪府営水道の過剰な水資源開発は、受水市町村に地下水など自己水源の縮小・放棄が押しつけられ、かえって渇水を深刻にしていると言えます。また大阪府は 「万一に備えて、淀川とは別の水源の確保が必要」として、安威川ダム建設を進めようとしていますが、それを言うのなら、複数水源としてもっとも頼りになる市町村の自己水源の維持・確保に、もっと力を入れるべきではないでしょうか。

(22) もう一つ、安威川ダムを凍結して、「ダムに頼らない、利水と治水の方策を検討せよ」と求める理由に、ダムサイトとダム湖周辺の活断層の存在など、地質の問題があります。ます゛ダムサイト付近には大小24本の断層の存在が確認され、活断層との関連が危惧されています。さらにダム湖周囲には馬場断層とともに、無数の断層が十文字に存在するなど大変複雑な地層の特徴をなしています。

(23) こうした地質の存在と併せて。周辺には多数の土石流危険渓流が分布しています。ピンク色は危険度Aで、オレンジ色は危険度Bです。こうした地質的に問題がある地域にダムを建設すれば、豪雨時や地震時に土石流が発生する可能性は否定できません。

(24) 大規模な地すべりが発生して、安威川ダムの堤体を越流すれば、ダムに貯水されている大量の水が洪水となって、下流の茨木市、高槻市、摂津市、吹田市、大阪市域などを襲うこととなります。 たとえばイタリアのバイオントダムのダム津波の例では、地すべりの土砂がダム湖に崩れ落ち、多量の水が堤体を越えて下流を襲い、死者二千名をこえる大惨事となりました。国内でも秋田県の尾去沢(おさりざわ)鉱山ダムの崩壊で゛315人が犠牲となった歴史など死者が出た例が5件あります。最近でも奈良県の大滝ダムで試験湛水時に大規模な地すべりが発生して、集落の全戸が移転を余儀なくされる例が出ています。

(25) 最後まで、ご覧いただきありがとうございました。アメリカではすでに「ダムのような環境に及ぼす影響の大きな事業を行おうとするときは、環境影響コストを上回る事業効果を上げる必要がある」といわれています。日本ではまだ環境影響コストを過少に、事業効果を過大に評価して、事業が強行される例が続いています。
大阪でも、全国でも、「環境破壊のダム建設はやめよ。地域・生活密着型公共事業に転換せよ」の声を上げようではありませんか。安威川ダム計画を一旦凍結をして、ダムに頼らない、利水と治水の方策を検討させるため、ご協力をよろしくお願いします。