

①「彩都開発計画の破たんと住民犠牲」について述べる前に、この計画のあらましについて説明する。
彩都開発は北大阪の茨木市から箕面市の丘陵地域に、甲子園球場の180個分の面積約742㌶を、主に企業の研究開発施設と高級住宅を建設するために、機構(当時は都市基盤整備公団)を事業主体とする土地区画整理事業によって、バブル後の1994年に本格着工し、造成工事が進められてきた。またこの計画は機構が進めている大規模なニュータウン事業の全国的に見ても最後のものである。彩都の現状は西部地区313㌶の内・造成中又は済みが約270㌶(85%)。内、街びらき済みは約120㌶。2008年4月末現在の居住世帯は2,098世帯、居住人口は6,066人、就業人口は約800人と言われている。

②2008年4月初旬の一般新聞(関西エリア版)の第一面で、『都市機構が彩都・東部の開発撤退、中部地区も見通し立たず-住宅需要見込めず」と大きく報道した。またその後、「彩都中部地域を低価格で販売」と赤字拡大の無責任な開発継続に執念を燃やしています。
ムダな大型開発や公共事業が地方の財政のみならず、国の財政破たんの主要な原因となっている事実が次々と明らかになっているが、彩都計画はその典型である。「必要のない」、「役に立たない」、「採算がとれない」という、3つの「ない」を絵に描いたような計画である。今、この事実を茨木市民や大阪府民だけではなく、広く全国に知らせていく必要がある。ぜひ最後までご覧ください。とりわけ強調したいのは国のいいなりになって無謀な開発を共に推進してきた大阪府や茨木市にも大いに責任はあるが、都市再生機構(以下、「機構」という)
を使ってこうした見通しのないニュータウン事業を進めてきた最大の責任者は国である。国が閣議決定でニュータウン事業からの撤退を進めるなら、その後遺症で苦しむ地方自治体の財政支援で責任を取るべきである。

③国が閣議決定で、機構が全国で実施している、いわゆる大都市圏ニュータウン事業を2013年度までにすべての工事を終わらせ、さらに2018年度に事業を完了させるという方針を明確にした。この方針は国の「機構(旧公団)民営化」路線の具体化と言われている。いま機構が全国で事業実施中の計画は48地区-施行(予定)総面積で9908ヘクタール(甲子園球場の約2,500カ所分)にのぼる。今順次、機構が個別の事業完了の具体的内容の発表を始めた。その第1号が国際文化公園都市(彩都)であるといわれている。上位5地区は表の通りであるが、彩都はその中でも2番目の規模を持つ計画である。 こうした中で、関係各地区では地権者をはじめ、地方自治体で事業の進捗状況により差はあるが、動揺と危惧の声が広がっている。とくに彩都計画の縮小及び事業内容の変更を地権者や地方自治体がどのような対応をするのかが全国で注目されている。

④開発を進める口実は「単なる住宅開発ではない。ライフサイエンス分野の研究開発拠点をはじめ、国際的な学術研究・文化交流拠点整備と合わせた複合都市を建設する」というものである。計画の上では居住人口5万人、住宅用地239㌶(32.1%)とともに、施設人口2万4千人、施設誘致用地205㌶(27.6%)とされた。ところが実際には、企業研究施設地区に予定されていた地域もマンション開発地域に転用されるなど、施設人口のはりつきは進んでいない。一方、居住人口はモノレールの開通もあって、マンション中心に進みつつあるが、今後の見通しは不透明である。こうした中で、施設人口増のため、製造施設の建設も可能になるよう用途地域の見直しも検討されている。こりようにすでに街づくりのコンセプトも破たんしている。

⑤この開発は当初から公的な装いを凝らし、その費用の多くを税金投入によってまかない、万一破たんした場合は税金であと始末する体制が作られていった。その内容は機構(当時・公団)が事業主体として土地区画整理事業を行い、開発地全体の1次造成を行う、ついで開発地域のシンボルゾーンの整備は大阪府、茨木市・箕面市と阪急電鉄など民間企業共同出資の第三セクター-国際文化公園都市㈱(2001年破たん-阪急に用地処分中)が担当し、その他の民間大規模土地所有者と同様に2次造成を行い、ただし個人地権者には2次造成済みの土地を換地することとした。また開発区域外の道路、下水道などの公共施設や区域内の学校、保育所など公益施設は府や市が負担する事で進められた。こうして作られた枠組みの下に1994年に事業認可、本格着工-それから14年。計画の破たんと大幅な計画縮小により新たな問題を抱えることとなった。しかしこうした経過をたどった地域は、機構が行っているニュータウン事業で多数を占めると考えられる。国の大企業救済という失政の責任追及とその「あと始末」で責任を取るよう改めて求める必要がある。

⑥機構が今回発表した資料によると彩都特定土地区画整理事業の準備段階から「2006年度」までにに実施した事業の実績額は合計約964億円としている。また「2007年度」から工事完了の「2013年度」までの西部地区における事業予定額は合計約382億円としている。即ち2013年度には工事を完了し、2014年度から2018年度の間に事業完了手続き行うとしている。また「現在、2013年度までの西部地区の工事内容について府・市と協議中」としている。さらに、「閣議決定」に基づき2013年度中に工事を完了するために、東部地区は事業中止。中部地区も、現時点では「事業着手予定なし」としている。

⑦ここで彩都土地区画整理事業の仕組みを説明するが、上段のグラフが事業施行前の土地の保有状況である。下段のグラフは事業施行後の土地の保有状況である。これが公共減歩の30%(102㌶)、保留地減歩の20%(60㌶)のために、すべての土地所有者の保有面積は半分となる。すなわち土地所有者は道路や公園など公共用地と第3者に土地を処分して、整備費の財源を作り出すための保留地を提供することとなる。

⑧問題はこの事業について、多額の欠損金を計上する事が必至であるということである。この事業の主な財源は土地区画整理事業により確保した保留地の処分金であるが、宅地需要の激減で処分はほとんど進んでいない。因みに西部地区で2008年3月末現在の保留地指定面積は約39㌶(最終は約60㌶)、機構所有仮換地指定面積は約20㌶(最終は22㌶)であるが、処分済み面積は合計で約18㌶(処分率31%)、処分価格も平均で10万円/㎡で、当初処分予定価格24万円/㎡に遠く及んでいない。(ガーデンモール彩都-平和堂等の出店用地も借地)このままでは資産の評価損により多額の欠損金を生じ、将来国民の税金で処理することとなる。したがって欠損金を最小限にくい止めるためにも、今後予定している約382億円の事業予定額を区画整理事業完了に必要な範囲で最小限に圧縮させる必要がある。

⑨緑色は保留地で彩都西地区で60㌶を確保し、処分して整備費の財源に充てることとなる。橙色は機構が土地区画整理事業の採算性向上のために法人や個人の所有地を事前に彩都西地区で46㌶(仮換地時点では23㌶)の転売を受けたものであるが、その価格は約5万円/㎡といわれている。したがって仮換地後処分価格10万円/㎡では、採算性を向上させるどころかむしろ欠損金を増加させることとなる。

⑩大阪府が彩都開発関連公共公益施設整備に投入した府負担額は07年度末でモノレール事業も含めて約312億円。内一般財源が約78億円、起債が約234億円である(推定)。これを今後20~30年間で返済することになるが、当然金利も付くので、その返済総額は約380億円になる。これを均等で返済するとなると単年度で約20億円となる。大阪府は財政破たんの中でも、今年度も都市計画道路や砂防ダム建設で8.3億円予算化しようとしている。

⑪茨木市が彩都開発関連公共公益施設に投入した市負担額は2008年度末で合計約118億円、内一般財源が約36億円、起債又は機構の立て替え施行分が約82億円である。これを今後約20年間で返済することになるが、当然金利も付くので、その返済総額は約131億円になる。これを均等で返済するとなると単年度で約6.5億円となる。茨木市は今後、公益施設として西部地区ではコミセン、図書館、消防署、市役所出張所。公共施設として地区内公共下水道、区域外都市計画道路山麓線、国文3号線整備を予定している。
大阪府も茨木市も自らの公共公益施設整備も当然一旦凍結をして、必要最小限にとどめることは言うまでもない。茨木市は、借金返済の財源を、開発地域に進出する企業や新たに住む住民からの税収からと当てにしていたが見通しを大きく下回っている。さらに計画縮小でこれに一層の拍車がかかることとなる。またこれまで税金からの支出はほとんどないという事前の説明も、国や機構の財政難や採算の悪化から、学校建設などの市の負担が増えてきている。

⑫とくに問題なのは都市計画道路山麓線と国文3号線整備である。現在の推計では総事業費は約78億円、財源内訳は国が約37億円、機構が約10億円、市が約31億円としている。いずれにしても、現時点でも市の負担は約31億円である。すでに茨木市は道路用地予定面積の4分の3を、約18億円で先行取得している。しかし東部地区の開発が中止になると、東部地区通過部分の整備は不可能となる。さらに中部地区が不可能となった場合、機構による道路整備も不可能となり、その結果国負担も減り、機構負担はなくなると更に市負担は20億円増え、市の負担は50億円を超える事となる。それだけではなく茨木市は道路として用をなさない袋小路になるこの道路整備を今だ継続しようとしている。

⑬1970年頃。国文都市開発地域のうち阪急電鉄など民間企業の所有地(斜線部分)は総面積742㌶の70%にのぼる。丘陵地域で最初に開発に着手(1970年)したのは昭和土地開発(関西電力と住友信託銀行共同出資)で、サニータウン(126㌶、3千戸、人口1万2千人)であった。着工時点では大阪は「万博景気」にわきかえっていたが、まもなく第1次オイルショックに見舞われ、完成時点の74年では地価が大幅に下落し、しかも開発地域の北よりの地域に存在が予測されていた活断層(馬場断層)により大規模な破砕帯を伴っていることが明らかとなり、また全域の多くの箇所で湧水が確認されるとともに地下水位が高く、当初予定していた造成費より、相当高額の経費がかかることになった事も相まって、この開発は大赤字となり、破たんの結末を、造成地すべてを当時の住宅公団に買い取らせるという形での跡始末さえ画策されることとなった。さすがにこれは当時の日本共産党国会議員団の追及で失敗し、公営企業という性格を持つ、関電がこうした開発事業から撤退することとなった。

⑭開発地域742㌶の具体的な所有状況は表の通りである。70年代当初のその内訳は阪急電鉄など主要な6者が470㌶、その他の大口所有者が41㌶、個人の所有者が206㌶、道路、水路、里道等が25㌶という内訳であった。その後全体の土地所有者からライフサイエンス系企業の誘致のために33㌶、機構を区画整理事業者にするために109㌶の転売が行われた。そして1994年に機構が土地区画整理事業の認可をとり着工した。それはバブルがはじけた1991年の3年後である。すでにこの時点で無謀な開発計画であったことは明白である。にも関わらず開発が強行されたのは、国の大規模土地所有者救済以外のなにものでもない。

⑮上記の図と表のように、開発総面積742㌶の内、約70%の約510㌶は大企業等の所有地であった。その内、実に約320㌶は阪急系の所有であった。阪急はそのほとんどを1960年代後期に買収を行っている。その価格は茨木市長が管理者を務める立会山(たちあいやま)財産区財産(84㌶)の場合は㎥/2,300円である。その他の個人所有地でも㎥/10,000円以下と言われている。これらの土地を転売禁止の確約書を交わしているにもかかわらず、バイオ企業に転売したり、機構に約60㌶、国文会社には㎡/65,000円で転売してl利益を上げている。今回の特別損失の計上は過去の評価益による特別利益の計上の一部を元に戻したに過ぎない。

⑯日本共産党は1970年代から市議会内外で、国会議員団と共に取りあげてきたが、計画が具体化した1990年に、市民の皆さんと「茨木北部丘陵地域の自然を守る市民会議」を結成し、「計画中止」を求めて、大運動に取り組んだ。今やその正当性が証明された。計画の破たんという新たな事態の中、運動の再構築があらためて必要である。

⑰94年1月11日付「市民会議」と「日本共産党茨木市会議員団」の彩都特定土地区画整理事業事業計画に対する意見書(大阪府知事経由建設大臣宛)及び94年7月15日付建設大臣(野坂浩賢)回答通知の内容は次の通りである。(その後94年9月に国認可)
建設大臣回答-資金計画書の内容は適正なものと認められる。
建設大臣回答-複合都市機能の形成、定住性豊かな住機能を確保するために適切なものと認められる。
建設大臣回答-直ちに不適切とはいえない。
建設大臣回答-保留地の予定価格は不動産鑑定士による鑑定調査によって、算定されたものであり、適正なものと認められる。
建設大臣回答-公園・緑地を系統的に配置した事業計画になっている。
いずれの回答内容も誤りであることが事実で証明された。

⑱「彩都土地区画整理事業と関連の公共・公益施設整備については一旦凍結をして、新住民や個人地権者など住民合意で、最小限の事業の継続を」ことを提案する。 中部と東部地区はこれ以上の事業の赤字拡大と地方自治体の負担をふやさないために当然中止するのは言うまでもない。また地方自治体が行う予定だった関連道路事業等も全体計画縮小に合わせて中止する。 とくにこれから行う西部地区内での機構の土地区画整理事業と地方自治体の関連事業は関係住民や個人地権者など合意の下、最小限にとどめ、事業の赤字額を最大限圧縮するるとともに、国に事業破たんの責任をとらせ、過去の地方自治体の関連事業や新たに発行する地方債や立て替え金の返済期間延長や利子額を補填させることを提案する。

⑲最後まで、ごらんいただきありがとうございました。いずれにしても土地区画整理事業はリスクの多い手法である。それを知りつつ推進してきた国と機構、積極的に参画してきた地方自治体。結局、今回の撤退で影響を受けるのは府民、市民、個人地権者、新住民などである。今こそ、その原因を明らかにすると共に、適切な措置と対策を求めましょう。ぜひご意見を数多くお寄せください。