三島保育所民営化凍結・施行の延期を求める請願を不採択に

 6月定例市議会に茨木市立三島保育所の民営化凍結施行の延期を求める請願を保護者会を中心に多くの署名が提出されましたが、日本共産党の5人と新社会党の山下市議をのぞく市議が反対し、不採択となりました。しかも請願の採決が行われた6月21日の市議会本会議では、日本共産党を代表してのあじち洋子市議の請願採択の立場からの賛成討論を自民党の木本市議や公明党の菱本市議を中心に執拗に妨害を行い、そのため議事が5時間にわたって、空転しました。こうした中でも、あじち洋子市議は妨害に屈せず、最後まで請願者の立場に立って、堂々の賛成討論を行いました。



[阿字地洋子] 6月議会 討論 06年6月21日

請願第4号「茨木市立三島保育所民営化に関することについて」採択賛成討論


 請願第4号「茨木市立三島保育所民営化に関することについて」、採択すべきとの立場から、日本共産党市会議員団を代表して、討論を行います。

 最初に本請願の審査が行われた民生産業常任委員会での議論に関して、一言申し上げます。まず木本議員から「茨木市議会は2院制ではない。「横暴な市議会」に請願を出すのは、論理矛盾である」との発言がありました。そこで最近実際あった鳥取県人権救済条例施行凍結の経過を申し上げます。鳥取県では昨年10月に、人権侵害事案の申し立てに対して、行政がその可否を判断して、可の場合は行政が救済措置を発する「人権救済条例」が議員提案で、共産党県議がゼロの中、本年6月施行で全会一致可決成立しました。ところが、その後「人権侵害の定義があいまい」「 救済の実効性を図る過料・勧告・公表の妥当性」「 表現、報道の自由の保障」など問題点が指摘され、とくに可否を判断する第3者機関の委員に就任予定の県弁護士会が「司法ならともかく、行政が人権侵害かどうかを判断するのは困難である」との意見書を提出し、委員就任を拒否しました。また県民からも、多くの反対請願が提出されました。そこで鳥取県知事は本年3月県議会に、条例の「無期限施行停止条例」を提案。これまた全会一致可決成立しました。このように一度決めた条例でも、「改めるに憚ることなかれ」ということです。また県議会に提出された請願には「議会の横暴」を指摘する内容が含まれていたことも申し添えます。従って今回、3月に廃止民営化条例を委員会で強行採決をした議員の「横暴」を指摘して、行政に施行について、再考を求める請願を提出することは、何ら不思議ではありません。従って、こうした請願提出に異議を唱えるということは、まさに、「請願権の否定」以外のなにものでもありません。今、茨木市が具体的に進めている民営化の実態は、横浜地裁違法判決の状態とほぼ同じで、場合によっては一層の違法状態です。今、茨木市議会でもなすべきことは、鳥取県議会同様、「良識の府」として、本請願を採択した上で、「採決強行」議員が率先して議員提案して、保育所廃止条例の施行停止条例を全会一致可決成立させるべきであります。また菱本議員からは請願文書にある「議会の横暴」の文言に紹介議員はやめるよう、助言したのか」という発言もありました。また他の議員からも同様な発言がありました。もとより紹介議員は請願者の率直な感想について、法的にも指導すべき立場にありません。こうした議員の一連の発言には、「市民から選ばれた議員が多数で決めたことに、市民が文句をつけるのはおこがましい」という、「お上」の思想が潜在していることを率直に指摘し、以下本題に入ります。

 本請願の採択に賛成する理由の第一は、憲法と地方自治法に明記している、住民の請願権を根本から擁護するという立場に立つからです。そもそも市民が市議会に提出する請願は、その請願権を尊重する立場から、特にその内容が、「公共の福祉」に反しない限り採択をし、市長に送付し、その実現を求めるのが法の趣旨であり、市議会のつとめです。本請願の願意は「平成19年4月に定められている茨木市立三島保育所廃止条例の施行を凍結し、民営化の本質についてももう一度検討し直してください」というものです。先ほども申し上げましたが、6月15日の民生産業常任委員会の請願者の説明に対して、議員から「3月議会で、すでに議決した条例にたいして・・同じような請願をするということは論理矛盾がある。裁判に訴えていただきたいと思います。議会には、これ以上、この問題を持ち込まないでいただきたい」という意見や、また、「条例改正というのは、残念でありますが可決されております。・・・今その中で議論することが必要なことは、・・・茨木に新しい財産を持ってくるために、どのような業者をえらぶのか、そのことに力を注ぐべきだと考える」等々の意見は、請願者の願意を真正面から受け止める態度に欠けています。また、この間の民営化に関わる行政の進め方、特に、保護者会への説明や移管手続きなどでも、保護者の不安を招く、新たな要因が指摘されており、本件請願の願意はいずれも「もっとも」であります。従って、例え条例が一旦、可決されても、問題があれば施行を凍結し、市民や有識者の声を聞くために再度、議論に附し、仕切りなおすことであり、今、茨木市議会にはその度量が強く求められています。

 本請願の採択に賛成する理由の第二は、本請願の趣旨は、「三島保育所が平成19年4月より民営化することが決まりました。しかしこの議決は保育の実質に関する議論がなされないまま、大半の議論が財政難の打開という観点でなされたものであり、民営化の本質にについて次世代育成行動計画などとのつながりからもう一度検討してください」というものであり、この願意もまた、「至極もっとも」であるからです。
三島保育所では「あくまで平成19年4月に本件民営化を実施するという前提のもと、これまで4回、民営化説明会が行なわれましたが、現在の公立保育所民営化計画では「子供の健全な保育環境が守られない」という危機感を抱き、保護者会は要望書・質問書・意見書という形で主張されてきました。
この中で、「市の態度はかたくなであり、保護者の意見を取り入れる姿勢やしくみの確立にはいたっていない」と指摘している通り、民営化の期日だけ決めて、強行する市の対応は、保護者の不安と怒りを増大させ、施行凍結を求める請願を提出することは、十二分に理解できるものです。
また、これまで、公立保育所のあり方を考える懇談会において全会一致で可決された意見書の中でも「一部民営化については時間をかけて慎重に」という付帯決議がありましたが、そうした声も真摯に受け止めず、強行してきた結果、保護者が請願という形で意思表示を行っているものです。横浜地裁判決では「市立保育所の民営化が被告・横浜市の財政状況を前提としていることは明らかであるが、多様な保育ニーズに応えるという本件民営化の目的からすれば、特別に本件民営化を急ぐべき理由は認められない」とする違法性の根拠を指摘しています。本請願は、まさにこの点、つまり、「民営化の本質」についての議論が不十分なので、民営化施行を一旦凍結して、もう一度徹底的に検討していただきたいというこの願意は、全く道理があります。

以上、採択すべきという理由を大きく2点申し上げ、賛成討論と致します。